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領域代表挨拶

領域代表 東京大学医科学研究所・教授 井上純一郎

 平成22年度より、新学術領域研究「翻訳後修飾によるシグナル伝達制御の分子基盤と疾患発症におけるその破綻」(略称:修飾シグナル病)がスタートしました。本領域では、文字通り細胞内シグナル伝達の制御に関わる翻訳後修飾の詳細を明らかにしつつ、その制御異常と疾患との関係を追求して行きます。計画研究では、主にNF-κB、MAPキナーゼ、Aktを制御するシグナル伝達経路とそれらの制御異常が発症及び進行に深く関わると考えられている癌、自己免疫疾患、感染症、糖尿病、神経変性疾患、骨代謝異常を始めとする難治性疾患等を研究対象に考えています。一方、公募研究ではこれらに限らず、多様なシグナル伝達経路とその制御に関わる翻訳後修飾研究を対象としますし、翻訳後修飾の時空間的動態を捉えるプロテオミクス解析や分子イメージング法など、新たな基盤技術開発に関する研究も期待しています。

 しかし、私が本領域の特徴として強調したいのは、分子細胞生物学、医科学、構造生物学、数理科学、プロテオミクス研究者の有機的な異分野連携が生み出すシナジーが領域推進の源である点です。同じ専門分野の研究者間では共通の実験系、理論、発想が多くお互いの理解は無理なく深まって行きます。一方、分子細胞生物学・医科学分野の研究者と構造生物学の研究者の間でさえ、その交流が活発になりつつあるものの、お互いの深い理解には時間が必要ですし、ましてやこれらの研究者と数理科学者との間の交流は、ほとんど違う言語での会話に近い状況です。しかしながら、今まさに分子細胞生物学・医科学分野の研究者が、構造生物学的視点から正しくシグナル複合体形成を眺めるとともに、複合体構成タンパク質間の衝突で始まる相互作用をタンパク質の濃度、時間、確率等の概念を取り入れて数式として捉えることが、シグナル伝達の時空間変化を統合的に解明する上で必須ではないでしょうか。また、逆に構造生物学や数理科学の研究者が分子細胞生物学・医科学分野の研究者の実験系や発想を真に理解することもシナジーを生むのに不可欠と考えています。ですので、本領域の運営において計画研究班と公募研究班が一丸となって異分野研究を徹底的に理解し、効率の良い連携がうまれるように務めたいと考えていますし、そのような仕組みを工夫する計画です。

 このような方向性にご賛同いただける方に本領域に参加していただき、ともに切磋琢磨し大きなブレークスルーを生み出すこと、またその中で若手研究者が育って行くこと、それが私の夢です。どうかよろしくお願い致します。

平成22年9月1日